【連載】第15話|根は、つながっていた
入口を直したあと、耕すと決めてから、一週間と少しが経った。
毎日、誰かの投稿に一言返す。琵琶湖の夕方に、大津の喫茶店に、比叡山の空に。
数字で見れば、地味な作業だ。
フォロワーは23人から26人。3人しか増えていない。
でも、顔なじみは増えた。
名前を覚えて、また声をかける。相手も、覚えてくれる。
大津駅前の焙煎所さんとは、何度か言葉を交わすうちに、「近いうちに伺います」と、自分から書いていた。
比叡山のふもとの喫茶店さんからは、「いつかぜひお越しください」と言ってもらえた。
耕している、という感覚は、合っていたと思う。
ただ、思っていたのと違うことが、いくつかあった。
ひとつは、募集のポストだ。
数字を見直していて、気づいた。一番読まれていたのは、新しく作った投稿ではなく、7月のはじめに固定していた古い投稿だった。
新しいものを作り続けるより、すでにあるものを、ちゃんと見える場所に置いておくほうが、届いていた。
もうひとつは、インスタだった。
ある作り手さんのページを開いたら、「おすすめ」の欄に、別の作り手さんが並んでいた。開くと、また別の人がいた。
ガラス作家、木工職人、養蜂もする家具職人、チーズ職人。
たどっていくと、湖西の山あいにも、東近江の町にも、知らなかった作り手さんたちが、思っていたよりずっと多くいた。
一人を掘っていたら、隣とつながっていた。
根が、つながっていたということだと思う。
畑の下には、もう何かがあった。自分が種をまく前から、そこにあった。
しがのがやることは、それを見つけて、声をかけることだけなのかもしれない。
もうひとつ、直したことがある。
インスタで、好きなお店を1つ教えてくださいという質問を、出そうとしていた。
書きかけて、止まった。
しがのは、お店を紹介してもらう場所じゃない。人を紹介してもらう場所だ。
お店の名前を聞くのは、しがのの入口としては、順番が違う。
小さな言い直しだけど、忘れかけていたことに、自分で気づけたのは良かったと思う。
見送る判断も、少しずつできるようになった。
企業の宣伝、もう伸びている投稿、フォローバック狙いをやんわり拒む人。返信しない方がいい相手が、前より分かるようになった。
耕すというのは、種をまく場所を選ぶことでもあるらしい。
正直に書くと、いつでも行ける店が、もう2軒ある。行けば、会ってもらえる。話も、聞いてもらえる。
一度は、行こうと決めかけた。
でも、今日は行かない。
急いで摘んだ実は、たぶん熟れていない。もう少し、耕す。
顔なじみが増えて、根がつながって、その先で、誰かが誰かを連れてきてくれる日を待つ。
急がず、でも止まらず。
そのくらいの感じで、しがのは今日も続いている。
この記事を読んだ方へ
滋賀で 「この人に会ってみて」 と思い浮かぶ人がいれば、教えてください。
店主さん、職人さん、作家さん、地域で活動している人など。 名前がはっきり分からなくても大丈夫です。 紹介されたら、実際に会いに行き、 その人の仕事・店・活動・場所を写真と文章で残します。 紹介されたら、実際に会いに行って、訪問後7日以内に記事にします。
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