【連載】第14話|数字は小さく、返事は多い

入口を直したあと、呼びかけを始めた。

Xで、言葉を変えながら3回。

「この人に会ってみて、という知り合いはいませんか」
「職人さんや作り手さんを1人教えてください」
「店主さんの顔が浮かぶお店を1つ教えてください」

どれも、しがのらしい呼びかけになったと思う。

結果を書いておく。

見られた回数は、109回、32回、17回。

フォームは、動かなかった。

正直に言えば、少しは期待していた。

言葉を変えれば、届き方が変わるんじゃないか。
3つ試せば、どれかが当たるんじゃないか。

でも、フォロワー23人のアカウントでは、
言葉の違いは数字にならなかった。

109と17の差は、たぶん言葉の差ではない。
その時間にタイムラインにいた人の数の差だ。

呼びかけは、まだ届く場所まで行っていない。

それが分かった。

がっかりしなかったと言えば、嘘になる。

でも、不思議と、やめようとは思わなかった。

数字が小さいことと、
意味がないことは、違う。

109回、誰かのタイムラインに
「しがの」という名前が流れた。

それは、ゼロではない。

ただ、別のことも分かった。

自分の投稿より、
人の投稿への返信のほうが、読まれていた。

琵琶湖の写真を上げた人に、一言返す。
比叡山に登った人に、一言返す。
滋賀を旅した人に、一言返す。

そういう返信のほうが、
自分のポストより多くの人の目に触れていた。

そして、返事が来た。

ある日は、7件返信して、5人から返事が来た。

弁理士さん。
SNSの発信が本業の人。
大津駅前の焙煎所さん。

会話が続いて、
相互フォローになった人もいる。

フォロワーは23人のまま、ほとんど動いていない。

でも、顔なじみは増え始めた。

数字は小さく、返事は多い。

いまのしがのは、そういう場所にいる。

呼びかけを畑に種をまくことだとしたら、
畑は、まだ耕し始めたばかりだった。

種をまく前に、土だった。

土というのは、
しがのを知っている人。
しがのの返信を見たことがある人。
名前を見て「ああ、あの」と思ってくれる人。

そういう人が増えてから、
呼びかけは初めて呼びかけになる。

順番が、逆だった。

だから、いまは耕す。

毎日、誰かの滋賀に一言返す。
琵琶湖の夕陽に、白鬚神社の鳥居に、
16歳の犬が乗るSUPに。

滋賀を撮った人、滋賀を歩いた人、
滋賀で働く人に、一言ずつ。

それが、いまのしがのの仕事らしい。

それでも、入口は開けておく。

呼びかけも、やめない。

誰かの「あの人、いいですよ」は、
耕している間にも届くかもしれないから。

数字は小さい。
でも、返事は多い。

始まりの数字としては、
悪くないのかもしれない。

急がず、でも止まらず。
しがのは、今日もそのくらいの感じで続いている。

この記事を読んだ方へ

滋賀で 「この人に会ってみて」 と思い浮かぶ人がいれば、教えてください。

店主さん、職人さん、作家さん、地域で活動している人など。 名前がはっきり分からなくても大丈夫です。 紹介されたら、実際に会いに行き、 その人の仕事・店・活動・場所を写真と文章で残します。 紹介されたら、実際に会いに行って、訪問後7日以内に記事にします。

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