【連載】第11話|静かなまま、続いている
5月になっていた。
湖沿いを歩く人の服装も、少し軽くなっている。
春が終わったというより、
気づいたら前に進んでいた、という感じだった。
しがのも、そんな感じだった。
新しい紹介は、まだ動いていない。
最初の一件も、まだ途中のままだ。
予定は決まっていない。
「行ってきました」という報告も、まだない。
でも、おざさは最近、前ほど焦らなくなっていた。
前は、何も動かない時間を見るたびに、
これでいいのかと思っていた。
止まっているんじゃないか。
誰にも届いていないんじゃないか。
そんなことを、何度も考えた。
でも、しがのは最初から、
勢いよく回り続けるサイトではなかった。
紹介されたら行く。
その形に決めた時点で、
速さより、誰かのタイミングに近づくことを選んでいたんだと思う。
だから、ときどき静かになる。
紹介する人にも生活があって、
紹介された側にも予定があって、
こちらにも歩幅がある。
全部が揃った時に、やっと一件動く。
たぶん、それでいい。
おざさは、最近そう思っている。
しがのは、動いている時だけが本編じゃない。
返事を待っている時間も、
紹介文を読み返している時間も、
湖沿いを歩きながら次を考えている時間も、
たぶん全部含めて、しがのなんだと思う。
それに、静かな時間が続いているのに、
終わった感じはしていなかった。
それが少し不思議だった。
前なら、何も起きない時間は、そのまま空白だった。
でも今は、静かなまま続いている感じがある。
たぶん、一件目が届いたからだと思う。
そして、そのあとに、もう一件届いたからだと思う。
まだ会えてはいない。
それでも、「ここ行ってみて」と送ってくれた人がいた。
その事実だけで、しがのは少し変わった。
ゼロではなくなった。
誰かの頭の中に、
「しがのに送ってみようかな」が存在している。
それだけで、十分大きい。
おざさは、湖を見ながらスマホをしまった。
今日は特に連絡も来ていない。
予定も増えていない。
でも、前ほど「何もない日」には見えなかった。
静かなだけだった。
静かなまま、続いている。
今のしがのは、たぶんそんな感じだ。
もし、あなたの中にも
「ここ行ってみて」があれば。
その一件を、置いていってください。
急には増えない。
でも、消えてもいない。 しがのは、今日もそのくらいの感じで続いている。
この記事を読んだ方へ
滋賀で 「この人に会ってみて」 と思い浮かぶ人がいれば、教えてください。
店主さん、職人さん、作家さん、地域で活動している人など。 名前がはっきり分からなくても大丈夫です。 紹介されたら、実際に会いに行き、 その人の仕事・店・活動・場所を写真と文章で残します。 紹介されたら、実際に会いに行って、訪問後7日以内に記事にします。
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