〖連載〗第8話|入口を整える
おざさは、また湖の近くを歩いていた。
何かが大きく進んだわけではない。
新しい返事が来たわけでもない。
次の訪問日が決まったわけでもない。
スマホを見ても、状況はあまり変わっていなかった。
最初の一件は、まだ途中にある。
それでも、この数日、何もしていなかったわけではなかった。
しがののホームページを、少し整えた。
はじめた時から、やることは決まっていた。
紹介されたら行く。
滋賀の「ここ行ってみて」と言われた場所や人に、実際に足を運ぶ。
ただ、その入口の形は、まだ少し揺れていた。
初めて来た人に、
これは何のサイトなのか。
どこから入ればいいのか。
どう紹介すればいいのか。
そのあたりが、前よりもう少し、まっすぐ伝わるようにしたかった。
紹介が来ない時間は、少しだけ気持ちを弱くする。
このままでいいのかと思う。
もっと言い方を変えたほうがいいのかと思う。
何か別のことを足したほうがいいのかと思う。
でも、おざさは思った。
しがのは、たぶん増やしすぎないほうがいい。
派手な言葉より、
ちゃんと伝わる言葉のほうがいい。
広げすぎるより、
来た一件をきちんと受け取れる形のほうがいい。
しがのは、紹介されたら行くサイトだ。
それ以上でも、それ以下でもない。
だから、入口もそのままの形に近いほうがいい。
紹介する。
しがのとは。
編集部募集。
同行について。
必要なものは、もうだいたい揃っている。
足りなかったのは、並び方とか、見え方とか、最初の一歩の置き方だったのかもしれない。
少し整えてみると、前より息がしやすくなった。
やることが増えたわけじゃない。
むしろ、減った感じがした。
これでいい。
紹介が来たら、行く。
来ない日は、開けておく。
そのくらいが、しがのには合っている。
おざさは、待つことにも形があるんだなと思った。
ただ止まっているだけの待ち方もある。
相手の様子ばかり見てしまう待ち方もある。
何も来ないことに、少しずつ疲れていく待ち方もある。
でも今は、前より少しましだった。
待つ場所が、少し整ったからだと思う。
最初の一件は、まだ途中にある。
でも、その一件のためだけに、しがのが閉じるわけじゃない。
別の紹介が来てもいい。
店でも、人でも、場所でもいい。
読者からでも、行った先からでもいい。
しがのは、一件ずつつながっていけばいい。
急がない。
押しすぎない。
でも、止まらない。
前にも似たことを考えた。
たぶん、これからも考える。
けれど今回は、その考えを、少しだけ外に出せた気がした。
ホームページを整えるというのは、見た目の話だけじゃなかった。
どういう姿勢で続けるかを、
自分でもう一度確認する作業だった。
おざさは、スマホをしまった。
まだ次の予定はない。
でも、前より少しだけ、次を受け取れる感じがしている。
入口が整った。
今回は、それで十分だと思った。
もし、あなたの中に
「ここ行ってみて」があるなら。
その一件を、置いていってください。
入口を整えたからといって、
すぐに物事が動き出すとは限らない。
それでも、開いている場所は、前より少し強い。
しがのは、今日もそのくらいの感じで続いている。
この記事を読んだ方へ
滋賀で 「この人に会ってみて」 と思い浮かぶ人がいれば、教えてください。
店主さん、職人さん、作家さん、地域で活動している人など。 名前がはっきり分からなくても大丈夫です。 紹介されたら、実際に会いに行き、 その人の仕事・店・活動・場所を写真と文章で残します。 紹介されたら、実際に会いに行って、訪問後7日以内に記事にします。
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